女の性(さが)
女性同士の「え!?痩せてるのに、まだ痩せるの?」とか「そんなに太ってないよ!」という会話は切ない。どこか歳末助け合い運動のような匂いが漂っている。「お似合いですよ」とノタまう店員は信用できない。TSUMORI CHISATOでバルーンタイプのワンピースを着た私は明らかに今くるよだったにも関わらず、「わぁ、お似合い」と言われたときは「お前、やる気か?」と、殺意を覚えたもんだ。
くるちゃんは大好きなんよ
かくいう西郷には160センチ・72キロと言う時代がある。
20歳前のうら若き少女時代から23歳ぐらいまで。洋服のサイズは15号。スリーサイズもほぼ同じと言う見事なビア樽体型。その上、牛乳瓶のような眼鏡をかけていたので、良縁もなし。男性にモテない。女友達とチャンバラと騒ぐだけの日々なので、際限なく太る。1日5食、何も不満の無い幸せな毎日だった。
結婚披露パーティ、ネタで72キロ時代の写真を出したけれど、たいしてウケなかった。それぐらいリアルな話。
転機は23歳。
有り得ない男前の男性に恋をしてしまい、しかもその男性が社交辞令で言ったと思われる「西郷ちゃんは痩せれば可愛いはず」という言葉におぼこの私は一念発起。エステに通い、真面目にダイエットに励んだ。眼鏡もコンタクトに変えた。結果、1年で20キロのダイエットに成功。40キロ後半まで落としたところで、男前には彼女がいることが判明し、告白するまでも無く失恋。ヤケになったものの、既にエステに100万を費やしてしまった私は人生最大の買い物を「脂肪」とし、リバウンドだけはせん!!と心に決めた。
結果、人生の楽しみを半分ぐらい亡くしてる。
それなりに恋愛もしたが、太っていた時のトラウマか、男性の気持ちを邪に感じてばかり。結婚できたのは奇跡だ。そして私は食べることが何よりも大好きなのに太りたくないばかりに我慢をし、食べても太らない友達を羨ましく思う日々。今一番の願いは「神様、食べても食べても太らない体をくだせぇ…」、これだ。
スーパーモデル拒食症で死去
Ana Carolina Restonさん(21)
このモデルさんの気持ちが分からないではない。
美しい人なのに、残念だ。
私が死なないのは、なんだかんだ言っても誘惑に負け、ちょいちょい暴飲暴食をして、ストレス発散し、「ちょっとリバウンドしたぐらいでなんやねん」と、結局、開き直っているからなのである。おばはんでもいい、時々は衝動的になって油バリバリの天麩羅を食いたい。
美しさも必要だが、心の健康はもっと大切。
そして私は今夜夢に見るだろう…土手の伊勢屋の天丼を。
衣はサクっと、十種類ぐらいの具にトロっとしたタレが…あ?最高!!
![]() | 東京下町グルメ散歩 交通新聞社 このアイテムの詳細を見る |