レクイエム
彼女はちいさな体を横たえて、そのちいさな口から少し血を吐いていました。
彼女がはじめてうちに来た日
かわいくてかわいくて仕方ありませんでした
血を拭いても、まだ温かい体を抱きしめたら、柔らかくて、死んだことが嘘みたい。たまらず泣き喚いて、取り乱して、揺すって、名前を呼んだけど、彼女が目を覚ますことはありません。急いで、家に連れて帰り、彼女の大好きな白いクッションに寝かせると、口からまた血がこぼれました。人が流す涙みたいに、はらはらと。
ほとんど失敗の症例がないといわれる避妊手術の麻酔時のことでした。
これもまた症例が少ないと言われる肺水腫を起こしたのです。
家まで我慢してたの?
彼女にそう語りかけました。
彼女は注射の時も爪を切るときも鳴かずに、ちいさく体としっぽを丸めて、私の目をじっと見ながら身を硬くするんです。鳴かずに我慢できたことをみんなに褒められると、しっぽを振って誇らしげにしてたっけ。
私たちのそばでお昼寝するのが大好きでした
ニイの上でもよく寝ていたね
もういいんだよ、がんばったね。
そう言って彼女の体をなでると、体はもう冷たくなりはじめていました。
彼女は死んでしまったのです。
私が死ぬまで、あなたを愛しているよ
もうすぐこの子にも同じ手術が待っています。
彼女譲りなのかな?ニイの上でよくまったりしています
彼女の死を無駄にしないために、私は動物医療のことをもっと知る努力をし、しなければならないこと、信頼できる医師、納得のいく準備と知識を得ました。それでもやっぱりナーバスになってしまうのは、彼女のことが今も胸の痛みとして残っているからなのでしょうか。
彼女が教えてくれた大切なこと。
飼い主しか守れない。
下手な獣医や病院にかからぬよう、うざいぐらいに確かめて。
絶対にこの子を守ってみせる。
この子は必ずこの手術を乗り越えて、元気にまた戻ってくる。
そう強く信じて、その日を待つことにします。
がんばろうね